『海が走るエンドロール』という、たらちねジョン先生のマンガを読んで心のざわつきがすごかったので紹介します。
主人公はうみ子という映画好きな65歳のおばあちゃん。夫を亡くして余生をどう生きようかと考えてるときに、映画館で海(カイ)という映像科に通う美大生の男の子に出会う。
海は上映中のうみ子を見ていて、自分と同じ映画を作りたい人だと気づき「今からだって死ぬ気で映画を作ったほうがいいよ」と告げる。
その言葉はうみ子の心を大きく動かし、海と同じ美大に通い映画の作り方を学び始める……という物語。
この「海が走るエンドロール」は心理描写に海の表現がよく出てくる。
話しているうちに足元に波が見えたり、ボートを漕いで航海したり、海に沈んだり。この独特な世界観がいい意味ですごくゾクゾクする。
また、うみ子と海の関係性もいい。
年齢の壁がなく、2人とも映画が好き過ぎるうえに、海はうみ子で映画を撮りたい、うみ子は海で映画を撮りたいという熱い想いがある。
時折うみ子が感じるトキメキや、真っ直ぐ過ぎる海の気持ちが恋といえるのかわからない。(海はアロマンティック・アセクシャルみたいだし。)
でもこの2人は広い意味で愛、とても大きな愛で繋がってる。その関係が美しくすごく素敵。
そして読み進めると、大阪弁の登場人物がでてきます。その人がいいんですよね。(これはネタバレしたくない)
映画に対して良くも悪くも純粋な人なので、うみ子と海に「泥啜っても血反吐履いてでも映画監督になりたいんやろ?」と言ったときは、私自身の心にもナイフを押し込まれたように思えた。
ワケあって自分自身を見切ったけど、それでも音楽ライターやインタビュワーになりたくて文章を書いている。
なによりも時間が溶けていく楽しさがあるから、映画にのめり込むうみ子と私自身を重ねて読んでいた。そこにこの一撃だった。
そしてそれでもなお、うみ子は、海は映画を作り続ける。私も諦めたくないし、頑張ろうとますます思えた。
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