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Skoop On Somebodyアルバム"Nice'n Slow Jam-beyond-"レビュー


Skoop On Somebodyアルバム"Nice'n Slow Jam -beyond-"全曲レビュー。



1997でしっかり足並みを揃えて、歩き始めた3人が放つREJOIN後2枚目となる今作。

過去と対峙して、現在(いま)のSkoop On Somebodyの音楽を作り上げていく。収録された楽曲は"-beyond-(越える)"と銘打ってるだけあって、過去を越えるような楽曲ばかりだ。



こだわり抜いた音質、年齢を重ねたことによる深み、音楽を突き詰め続けて得た圧倒的スキルと濃厚さ。



それを感じられる挑戦的な一枚となっている。











1曲目:One Life Stand



トップバッターから「こういうのを待ってたんだよ!!!!!」って、めっちゃくちゃ声を大にして言いたいぐらい、濃厚なファンク。

Gakushiさん本当にありがとうございます。


TAKEさんが武田と哲也で"Time Of Love"作ったときから「ホントはこういうのがやりたんじゃないの?でもKO-HEYさんがいないから……」そう勝手に思ってたから、本当に嬉しかった。



ドラムの一音一音が身体にダイレクトに来る。体に一音一音がしっかり入ってくるキック、強く叩いてとても尾を引くように聴こえるハイハット。所々で聴こえてくるスクラッチ音(Aメロの頭やサビの終わりとか)がハマってる。


トークボックスもパソコンでデジタルに加工……なんてちゃちなコトをせず、実際に演奏したものを入れる。このこだわりこそがSkoop On Somebodyですよ。



歌声に関してはイントロでTAKEさん囁いたりするうえに、一人で声重ねてる部分が多いのが最高。

後ろからファルセットでリードボーカルをなぞる感じとか、いい意味でゾクゾクする。


そのうえ、三人のハーモニーも聴ける。サビの最後に外側からふっとコーラスに包まれる感じが気持ちいい。

(あと……間奏でTAKEさんが"Good Cause!!"って言うの、めちゃめちゃかっこよくないですか???)


REJOIN以降からだと21曲(YouTubeの企画"Take a Break"、J-WAVE"ALL GOOD FRIDAY番組コーナーCOVER ME"のCoverを含めると32曲)作っているけど、その中で3本の指に入る。それぐらい大好き。





2曲目:きみには弱い



甘いんだけども甘ったるくないスムースさとグルーヴを兼ね備えた一曲。


TAKEさんのいい意味でニクい歌声、KO-ICHIROさんの甘いエロピの音色、KO-HEYさんの音と音の間が気持ちいいドラム。それに加えてTRI4THさんの生のホーンと小松秀行さんの音が大人の空気感を作り出している。


グラミー賞を受賞したミックスエンジニア、Gerry Brownの常識を逸脱した痺れるサウンドメイク、マスタリングはMike Bozzi が担当する。細部まで細かく作り込まれたサウンドは必聴。


この曲に関しては3000文字以上かけて徹底的に語り尽くしましたので、こちらからチェックしてほしい。





3曲目:Sha la la -From THE FIRST TAKE -



これまでSha la laは4作品(原曲、Club S.O.S. version、Mellow Flavor、New Mix)。そしてこのFrom THE FIRST TAKEで5作目。



Club S.O.S. versionはアコースティックな構成。原曲リリースから約2年半の月日が流れてるので、歌声とコーラスに磨きがかっている。

音が非常にキレイに録られてるのでアコギとコンガ、ボンゴの音だけでもいい意味でゾクゾクする気持ちよさがある。


Mellow Flavorは外部コーラスが参加し、アカペラ寄りのあたたかいアレンジとなっている。しっとりとしていて聴き心地がいい。


New Mixは歌声等は原曲そのままだが、ドラムが100%打ち込みになり、コーラスからKO-HEYさんの声が消えている。20年という節目に2人で歩く決意のSha la laなのだろうかと私は思ってる。

(特に、サビでは高音のシンセが前に出てるからわかりやすいです。)



そして今作-From THE FIRST TAKE -は、今現在の等身大のSkoop On Somebodyが鏡のように映し出されてるようなナンバーだ。


TAKEさんの歌声とKO-ICHIROさんKO-HEYさんのハーモニーは素朴な感じがあり、エロピの音が優しく耳に馴染み、ドラムがしっかりとリズムを刻み支える。

S.O.S.バンドのギター、ベース、シンセサイザー、コーラスと共に作り上げる曲は、紆余曲折の25年間を経ての熟成された、非常に味わい深い一曲になっている。





4曲目:ラビリンス~Mo' Passion~



What is Love?のものとは対を成すようなアレンジをKO-HEYさんが施したラビリンス。


原曲は、KO-ICHIROさんこだわりの重低音(おそらく低域共振)が入ってる。(※1)

ライブであの重低音を一度浴びてしまうと快感が忘れられない。楽曲を聴いていると、耳の何処かが呼び覚まされるような感覚に陥るぐらいだ。


その重低音を中心に無機質な打ち込みサウンドの作りであり、音同士の間を活かした内容になっている。



この、KO-HEYさんがアレンジしたMo' Passionは楽曲の肝といえる重低音をばっさりカット。ラテンパーカッションをふんだんに使い、ドラムの音は思いっきり前面に出している。

くわえて富永寛之さんのガットギターは一音一音が哀愁漂う音には味があるうえに、間奏の終盤のKO-HEYさんのドラムとの息のあった演奏には思わず息を呑んでしまう。


それと……個人的に『どこまで音を作ったのか』が気になる。ドラム以外にはコンガ、ボンゴ、シェイカー、カバサ、クラップ。

クラップは1つだけじゃなくて、何種類かある。(イントロを聴くとわかりやすい。残響がかかった音とそうじゃない音が交互になってる。)


Skoop On Somebodyは非常に音にこだわってるから、打ち込みに入れて作ってるとはいえ元の素材の音は全て作ってるんじゃないかな……なんて思ってるけど。どうなんでしょうね。



歌声の録り直しはせずに、そのままの音を使いそこにKO-HEYさんのコーラスを追加し、ミックスとマスタリングは「きみには弱い」と同じGerry BrownとMike Bozziのグラミー賞タッグが担当している。



最後に箇条書きだが『細かすぎて伝わらないラビリンス~Mo' Passion~の好きな音』を3つ紹介したい。


1.イントロ。先述したクラップの使い分け(KO-ICHIROさんのピアノが入ったら交互に鳴ってた音が揃う。いい意味でのゾクゾク感を感じてほしい。)

2.2番Bメロの思いっきり前に出てるKO-HEYさんのコーラス(きみには弱いもだけど、Mike Bozziさんは相当KO-HEYさんが好きなのかなと思う。素敵。)

3.最後のサビで1回だけクラップのビートが細かくなる(これすっごく好き!)





5曲目:ステラ



デジタルの時代になり、すっかり変わってしまった人達に疑問を投げかける一曲。(KO-HEYさん曰く「説教ソング」)


前もって書いておきますが、この曲の歌詞に関する部分、疑問や説教に関しては、『ステラのメッセージ Nice'n Slow Jam -beyond-レビュー番外編』という形で後日公開します。ここに収まる話じゃない。



曲に関してですが、賛否両論になるのを覚悟しての非常に斬新な構成はいいことだと思う。

音数が少ないからこそ、歌声、ドラム、ピアノの存在感はどれもとても大きく、ラストのコーラスはは本当に声をいくつ重ねているか全くわからないし、壮大に広がっていくのだから圧巻物。


……ただ、流石にサビは短すぎると思った。でも、無駄にあれこれ並べずシンプルイズベストのメッセージを届けたいのであり、なにがヒットするかわからないけどやってみようという話ならそのチャレンジ精神に拍手したい。



MVに関して、KO-HEYさんがラジオで「賛否両論があるものしたい」と提案しリップシーン(音源に合わせて歌う)や当て振り(音源に合わせてに演奏)も全く無い異色の作品になっている。


感動したのが終盤のLa La La...の部分。TAKEさんの背中だけが映るシーンがあるが、KO-HEYさんは音楽雑誌(※2)でボーカリストの話をした際に「背中が鳴ってる人、体全体で音が鳴っている人っているんですよ」と話をしていて、その意味がわかった。


(ちなみに、私は思いっきり見つめられるというのがとても苦手なので、Youtubeの高評価は押せなかったです……。)



どんどん暗くなっている時代を照らすような、希望の光といえる曲。

混沌に飲み込まれてしまわないように、優しさやあたたかい気持ちと笑顔を忘れないでというメッセージを込めたナンバー。





6曲目:椛~momiji~ Original Ver.



映画『引き出しの中のラブレター』の主題歌として使われた方のバージョン。これまで映画でしか聴けなかった音源を収録している。



シングル版はKO-HEYさんの抜けてしまった穴を埋めるためにストリングス隊を入れて、ギターには知念輝行さんを起用。


知念さんのギターでグルーヴを補強したりフレーズを添えたりし、イントロの最初や盛り上がるところでは厚みのあるストリングス隊を聴かせる。打ち込みのビートにはKO-HEYさんのような魅力はないので控えめになっている。


映画側に完成した楽曲を提出し、KO-HEYさんが抜けて大慌てで作り直したと思われる。

特にKO-ICHIROさんは一曲引き倒すというスタイルに変わっているので、大変だと思った。

でもそのリズミカルなピアノを活かし、かつゆったりとした感じの曲に作り変えたのは、本当にすごいことだと思う。



今回収録されたOriginal ver.は、様々な音と音の「間」を活かした作りになっている。


曲の軸となっているKO-HEYさんのドラムや打ち込みは存在感抜群、特にキックとハイハット、リムショットの脈打つビートが気持ちいい。

KO-ICHIROさんのエロピは曲の下敷きになり、音色が多いサウンドをしっかりと支えてグルーヴの隠し味となっている。


そこに曲を引き立てるヴァイオリンとヴィオラ、トッピングのようなエレキシタールやグロッケンが聴こえたり、すっと両脇から隙間を縫うように入ってくるエレキギター、そっと添えるような高音のピアノ。

この様々な音が使われた彩り豊かなサウンドが素敵。


あと……TAKEさんのボーカルを録りなおしたのかはハッキリとわからないけど、こころなしかシングル版はすごく丁寧に歌ってるように聴こえて、Original Ver.の方がグッとリズムに乗ってる気がする。





7曲目:Every Kiss,Every Lies~Plug & Play~



KO-HEYさんアレンジにより、甘くて華やかな大人の空気感が月明かりとギラギラ感がある大人の夜へと変貌を遂げたナンバー。


原曲のアレンジはSKY-HIやBE:FIRSTといったBMSG所属アーティストやちゃんみな、miletをプロデュースするRyosuke"Dr.R"Sakaiさん。今や超売れっ子だ。


華やかな大人の夜感を演出している音色豊かな打ち込みのサウンドは、鍵盤の色がとても濃く出ていてビートにはTR-808の音や水が落ちる音、流れる音が使われてるのが印象的だ。

TAKEさんがコーラスと重ねた歌声とKO-ICHIROさんのボコーダーが交互にくるサビは惹き込まれてしまう。



KO-HEYさんがアレンジしたPlug & Playは、いきなりドラムから始まる超不意打ち展開。

原曲の音が横に流れていくような感じに対して、ビシッと音の縦を揃える作りだ。


主役をしっかり聴かせるような形になっていて、重ねたコーラスやボコーダーはほぼ全てカットされてコーラスは控えめ、歌がない部分ではギターのメロディアスな音が聴こえてくる。


サウンドに関しては臨場感があるKO-HEYさんのドラムの音、ひっそりとしっかりとリズムを刻む知念さんのギター、小松さんの艷やかで太く揺らぐベースのグルーヴには味わいがある。これは無機質な打ち込みでは300%絶対に作れない音だ。


そのうえ、原曲ではスパイスのひとつになっているTR-808の音が思いっきり前に出てドラムとがっつり絡み合う。これがものすごく堪らない。



また、これはDiscotique Niteライブレポでも書いたが……もし、Mint Conditonが"Every Kiss,Every Lies"やったらこうなるだろうというような雰囲気も感じられる。





8曲目:Coming 2 you -remaster-



KO-HEYさんこだわりのリマスターがされたComing 2 you


KO-HEYさん曰く「すっきりどっきりはっきり」「天井も広くなるし、下もズドーンといく」「よりクリア。奥行きも出た」とのこと。(※3)



正直、これ以上にわかりやすい説明が本当に思いつかなかった。

なので書かなくていいですか?……なんてコトはもちろんしません。わかりやすく文章にできたものを3つ紹介します。


・シングル版のイントロ0秒から使われてる涼しい音をカット&追加

・重低音(キック)が突き上げる感じと広がりのある音になった

・サビのコーラス(Ah-)のところで音のアタック(耳に入ったときの感じ)が強くなった。



KO-HEYさんは「曲を作るときは全部の音が頭で鳴る」「一曲として全部鳴っている」とインタビューで答えている(※4)

リリース後にKO-HEYさんの頭で鳴った音があって、ピッタリに合わさるような細かい微調整をしたのだろうか。どちらにせよ圧倒でしか無い。





9曲目:祈り~Club SOS ver~



今現在の、ありのままのSkoop On Somebodyを感じることができる一曲。


原曲はデビュー2年目、通算7枚目のシングルのカップリング。当時はEverlasting Loveがシングルカットされるもいい結果を残せず、落胆し苦境に立たされていた頃だ。


故に今と比べると、いい意味での青く強く訴えかけるものがある。打楽器感から必死さを感じるKO-ICHIROさんのピアノと、序盤は丁寧に歌うも終盤では感情を解き放つTAKEさんの歌声、そして、3人で重ねるだけ重ねた重ねたコーラス。


特に、言いきかせるように"I never give up"と繰り返すのは、非常に心に沁みる。挫折を感じてるときに聴くと寄り添って、やり場のない気持ちを受け止めてくれる。



今回収録されたClub SOS ver.は、なんといっても至高と呼べるぐらい音がいい。


ピアノは優しく滑らかにメロディを奏で、カホンはそっとだがしっかり息づくビートを刻み、歌声には歳月を感じる深みとたくましさがある。

右からはKO-HEYさんのコーラスがよく聴こえ、左からはKO-ICHIROさんの声がよく聴こえる。それはまるでライブを聴いているような臨場感を味わえる。


Club SOSスタイルならではのナチュラルで心地良いサウンドを、3人が追い求め続ける「いい音」で存分に感じてほしい。





10曲目:終わらないクリスマス



ほっこりあったかいクリスマスソング。


歌詞から先に作る『詞先』で作られたナンバー。詳しく書くと、TAKEさんが歌詞を書く→KO-ICHIROさんがそれを見て曲を書く→受け取ってTAKEさんが歌詞を直したとのこと。


歌詞の「まばたく 輝く あなたの瞳が」は「輝く」ひとつで女の子が純粋無垢に思えるし、「見つめあうそれだけで 心はソワソワ」というちょっとだけ心高鳴る言葉をいれるだけで、ほっこりとした日常にドラマティックな感じを演出してていい。


そして「羽ばたく かさなる 真っ白な吐息が」は情景が浮かぶし絵になっててすごくすごく好き。見えてくる風景がキレイというTAKEさんの歌詞の真骨頂が発揮されてる。



曲に関してはハンドベル、グロッケン、鈴のクリスマス定番の音色が楽曲を彩っているけど、鈴が打ち込みじゃない気がする。イントロのシャンシャンだったり、ずーっと鳴っている音に人っぽさを感じた。(間違ってたらごめんなさい;;)


また、KO-HEYさんとKO-ICHIROさんがリードを取ってる部分が長いのもほっこり感があるし「Merry Christmas」「メリークリスマス」「メリクリ!」は三者三様の人柄が出ていていいなと思った。(ちなみに、指示はTAKEさんがしたそうです。)



世の中に不穏な空気が流れているからこそ、こういった何気ない日常のほっこり心温まる幸せが素敵だと思うし、一緒に一息ついてる時間ってとても大切なんだなと感じた。





まとめ。


実は、"beyond"という単語には『越える』以外に『遥か彼方』という意味もあります。


過去を越え、遥か彼方を目指しどこまでも素敵な音楽を追求していく……この先もSkoop On Somebodyから目を離せない。




(※1:2021年3月24日オンエアの倶楽部SOSでラビリンスの音のこだわりについて触れていてるが、おそらく人の耳には聴こえない重低音の鳴らしスピーカーの音を良くする低域共振の話だと思われる)

(※2:Breath2004年1月号)

(※3:倶楽部SOS2023年11月29日放送回)

(※4:2022年12月19日ドラムマガジンWeb版インタビューより)




 


最後にお知らせです。

このアルバムのリリースパーティーの配信ライブが3月14日にあります。


音源はもちろん、Skoop On Somebodyはライブもすごくすごくいいですので、ぜひ。



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